ライラの冒険:「ニコールに学んだ」13歳のシンデレラ ワイツ監督

ライラの冒険:「ニコールに学んだ」13歳のシンデレラ ワイツ監督も魅了


ダコタ・ブルー・リチャーズ(右)とクリス・ワイツ監督

 英国のファンタジー小説ライラの冒険」シリーズの第1弾「黄金の羅針盤」が映画化され、3月1日から日本で公開される。公開を前に来日したクリス・ワイツ監督とライラ役のダコタ・ブルー・リチャーズさんに作品の魅力を聞いた

 原作は、フィリップ・プルマンさんが、12歳の少女ライラの繰り広げる壮大な冒険を描いたファンタジーだ。95年に発表され、「指輪物語」に匹敵すると高い評価を受け、ベストセラーになった。

 物語の舞台は、分身ともいえる動物「ダイモン」がすべての人に付いているという「並行世界(パラレルワールド)」。ライラは、読解不可能といわれる黄金の羅針盤をある人物から手渡される。そのころ、子供たちばかりを狙った誘拐事件が発生、親友ロジャーも巻き込まれてしまう。ライラは、勇敢な鎧熊(よろいぐま)やジプシャン族、魔女族の女王といった風変わりな人たちの協力を得て、事件の真相と自らの出生の秘密を突き止めるための冒険へと旅立つ。

 世界中に多くのファンを持つこのベストセラー小説を映画化にするに当たって、脚本も手掛けたワイツ監督は、最も気をつけた点を「ライラが持つ独立心や決断力といった性格だけは、絶対変えてはいけないと思ったんだ。作り手が愚かなら、ライラをアメリカ人にしてしまったり、少年にしてしまったりしただろうけど、それでは作品が違ってしまうからね」と語る。

 ワイツ監督は、ヒュー・グラントさん主演の「アバウト・ア・ボーイ」や「天国からきたチャンピオン2002」(日本未公開)を手がけてきたが、いずれもヒューマン・コメディーで、今回のような製作費250億円という大作は初めてだ。「もちろんプレッシャーはあった。撮影は複雑だし、技術的にも新しいものと格闘し、それらに慣れなければならなかったからね。ただ、いつも立ち返ったのは、これは人間に関する物語なんだということ。映画は、どんなにVFX(映像の特殊効果)が素晴らしくても、観客が、俳優が演じるキャラクターに感情移入できなければ失敗だからね」と強調。それは既に公開されている世界33カ国での大ヒットが証明している。

 1万5000人の候補者の中からライラ役に選ばれた“シンデレラガール”が13歳のダコタさんだ。ワイツ監督は「カメラの前での自然な振る舞いに魅了された」と選考を振り返る。撮影当時12歳だった彼女は、この1年あまりの間に確実に成長し、映画での利発でやんちゃな容ぼうに美しさと気品が加わっていた。

 ダコタさんは、ライラについて「彼女は勇敢だし反抗心も持っていて、友達の前では『私に付いてきなさいよ』というように振舞っているけど、決してスーパー・ヒロインではない。普通の女の子の部分もあって、今回の冒険も、たまたま巻き込まれてしまっただけ」と分析する。演技では、「彼女の勇敢な部分を前面に押し出す一方で、内面に抱える恐怖心と、まだ子供だということを観客に感じてもらえるよう注意した」と話す。

 上流社会で絶大な権力を握るコールター夫人役のニコール・キッドマンさんや、叔父のアスリエル卿役で「007/カジノ・ロワイヤル」主演のダニエル・クレイグさんら大物と共演した。ダコタさんは「素晴らしい体験でした。こういう感情表現のときはこういうアプローチをしようとか、見ているだけでヒントを得ることができた」とうれしそうに振り返る。

 ニコールさんからは「セリフを失敗しても動きを止めないこと」、ダニエルさんやセラフィナ役のエヴァ・グリーンさんからは「人からどう思われようと、『アクション!』の声がかかる前に飛び上がったりすればいいこと」を学んだ。「セリフに失敗しても、そのまま続けたほうが意外にいいことがあるかもしれないし、後で動きや音を使えるかもしれない。でも、動きを止めてしまったら、そのテークはまったくムダになってしまうんです。アクションの前に飛び上がれば、でエネルギーが体に満ちてきて、そのシーンにすぐに飛び込める準備ができるから」と語る。

 「ものすごく努力をして、その努力に素晴らしい結果が付いてきている」というニコールさんとエヴァさんの演技を見て、「自分も頑張れば、いつの日か彼女たちのようにできるかもしれない」と希望を膨らませる。ワイツ監督も「こういう映画は、ベテランだって経験できるわけじゃない。物語を自分の肩に乗せてけん引していくんだからね。そんな役どころを演じられたことは、彼女にとって素晴らしい経験になっていると思う」と話す。

 続編について、ダコタさんは「もちろん楽しみにしてはいるけど、あまり期待し過ぎないようにしているの」という。お気に入りのシーンは、鎧熊のファイトシーンといい、「男の子たちが絶対ハマる。ちょっぴり怖いけれど、すごいアクションなので、そこをぜひチェックして」と自信に満ちた笑顔を見せていた。

 <クリス・ワイツ監督プロフィル>

 1969年、米ニューヨーク生まれ。英国ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ卒業後、98年に兄ポールとアニメーション映画「アンツ」(98年)の脚本を手掛ける。その後、兄が監督した「アメリカン・パイ」(99年)の製作や、「ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々」(00年)の脚本を手がけ、「天国からきたチャンピオン2002」(01年)で監督デビュー。彼の名を一躍有名にしたのは、脚本も担当した監督作「アバウト・ア・ボーイ」(02年)。また、「チャック&バック」(00年)や「Mr.&Mrs.スミス」(05年)では、俳優として出演している。

 <ダコタ・ブルー・リチャーズさんのプロフィル>

 1994年、4月11日 英国ブライトン生まれ。身長156cm 9歳のときに母親から「ライラの冒険」シリーズを読み聞かせてもらって以来の大のライラ・ファン。今回、1万5000人以上が競ったライラ役のオーディションで見事に役を勝ち取り、映画デビューを飾る。すでに「テラビシアにかける橋」(07年)のガボア・クスポ監督の新作「The Secret of Moonacre」の主演が決まっており、今後の活躍が期待される。毎日より

1994年、イギリス・ロンドン生まれ。『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(2007)で約1万5千人の候補者からライラ役に大抜てきされ、映画デビューを飾った。クリス・ワイツ監督と原作者のフィリップ・プルマンから「知性と野性の両方を兼ね備えている」と絶賛され、その堂々たる存在感で見事にライラを演じ切った。

●ダコタ・ブルー・リチャーズコーナー(英語版)
http://www.dakota.skyefairy.net/

ライラの冒険 黄金の羅針盤」予告編動画


ライラの冒険 黄金の羅針盤」公式サイト
http://lyra.gyao.jp


クリス・ワイツ監督ダコタ・ブルー・リチャーズ ニコール・キッドマン



一言 ニコール・キッドマンは世界で最も美しい妊婦さんです。