民主党の小沢一郎元代表は予想通り、離党も議員辞職もしない「闘争宣言」選択肢はあるのか?

 東京第5検察審査会検審)の4日の起訴議決から初めて公の場に姿を現した民主党小沢一郎元代表は予想通り、離党も議員辞職もしない「闘争宣言」をした。影響力保持のため正面突破を図ったといえる。だが、裁判がいつ決着するか見通しの立たない中、今後の政局で主導権を確保するのは困難で、小沢氏の前途は多難だ。

 「おー、いっぱいだねえ!」

 7日午後、衆院第2議員会館の会議室。100人を超す報道陣を見て、こう感想を漏らした小沢氏の表情は、側近たちに涙を浮かべた議決当日とは打って変わっていた。記者団に「どうぞ、どうぞ、どうぞ」と質問を促す余裕も。

 夕方からは国会近くのホテル囲碁の依(よ)田(だ)紀(のり)基(もと)九段と対局、ハンデ戦ながら2目差で勝利した。その後の夕食会ではふだんは刺身と酒だけの小沢氏が、サバイワシの握りにも手を伸ばした。依田氏が「日本の政治のために頑張って」と励ますと「これからも頑張る」と応じたという。

 側近の一人は「一審無罪で1年で決着が付く」と強調する。強制起訴されても検察が判断した通り公判維持は難しく、十分に無罪を獲得できる。検察不信や検察審査会のあり方に疑問の声もある中、表舞台で戦った方が形勢を立て直しやすいと判断したようだ。

 小沢氏が師事した田中角栄元首相や金丸信副総理は事件発覚後、自民党を離党した。中でも金丸氏東京佐川急便事件自民党副総裁を辞任した後、議員辞職、逮捕へと坂道を転げ落ちるように影響力を失った。小沢氏が離党や辞職を否定したのも、そうした前例も直接見てきたこともあるだろう。

 小沢氏を支持するグループ一新会」も側面支援に動きだした。7日昼の会合には中堅・若手ら20人が集まり、「小沢さんを支えて頑張っていきましょう!」と気勢を上げた。月1回のペースで参院の小沢系グループや衆院当選1回議員による「一新会倶楽部」の合同勉強会を行い、結束を固めることも決めた。

 小沢氏を支える“理論武装”のため、階(しな)猛前総務政務官は議決について(1)積極的に有罪獲得をめざす検察の起訴とは違う(2)事件処理の慎重を期すために行われるものだ−などとする文書をまとめた。

 だが、起訴議決で今後の政局のシナリオは狂った。小沢氏の支持派は衆参両院で多数派が異なるねじれ国会のため、菅政権が来年の通常国会には行き詰まるとみていた。しかし、裁判を抱えたままでは小沢氏は身動きできない。閣僚経験者の一人は「当面は静かでも野党や世論にせめられて、いずれ執行部は離党勧告をしなければいけなくなるよ」と予言する。

 自民党森喜朗元首相は7日午後、BS11の番組収録で、平成19年の自民、民主両党の大連立協議の際に福田康夫元首相と小沢氏の会談を仲介した経緯に触れ「小沢さんは後始末をしないから仲間が離れる。その後、わたしにも電話一本なかった」と小沢氏を批判した。小沢氏にはもはや再編の選択肢も残っていない。