「運命」の主題は青春である。

ジャ、ジャ、ジャ、ジャ〜♪〜〜〜ン。ジャ、ジャ、ジャ、ジャ〜♪〜〜〜ン
これは扉をたたく音ではなく、青春の鼓動である。今まさに新世界へ飛び出そうとしている時の満ち溢れたエネルギーの噴射である。次に訪れるのは不安と苦悩。そして心の平安である。ベートーヴェンは青春の鼓動とエネルギーの爆発。希望、喜び、苦悩、そして心の安らぎを表現しているのである。私は、運命を聞くたびに100m走のスタートラインに着いたときの心臓の鼓動を感じ、身震いがし、血が沸き返る思いがするのである。エネルギーが注入される曲なのである。きっとベートーヴェンもあるものに向かって意を決しスタートしようとして作ったのではなかろうか。新しいものに立ち向かうとき、挫折して倒れそうになった時、いつも勇気付けてくれるのはこの曲「運命」である。
そしてこの曲を見事に表現してくれるのはフルトヴェングラーである。第九と第五はフルトヴェングラーで決まりである。カラヤンが好きな方もあるに違いない。それはそれで良しとするが、カラヤン盤はスポーツカーでぶっ飛ばす感じで通り過ぎていくので、重厚でじっくり聞かせてくれるのが好みの私には合わない。フルトヴェングラー盤は第一音からして身が引き締まる思いがする。そしてはっとして思い出すのである。忘れかけた青春を。