「白鳥の湖」の白鳥と黒鳥の狭間における一考察

白鳥の湖」における清楚で可憐でたおやかな白鳥の踊りに比べ黒鳥はシャープでセクシーで魅惑的です。以前は二人のバレリーナがそれぞれの役を演じていたようですが現在は一人二役で踊っています。現代風の解釈を試みるに一人二役のほうは、女性の持つ多面性と容易に変化していく女性の姿を表現しようとしているのではないかと思われるのです。変化の少ない男性に比べ、女性は一生の間、日々様々に、変身していきます。少女時代から娘へ、そして女へと。妻として、母として、嫁として女性として。それらを見事に演じきっていくのが女性です。身も心も考え方も抵抗もなく変化させて環境に適応していく様は羨ましい限りです。女性は髪形一つでその人とはわからないくらいです(七変化)。白鳥と黒鳥のキャラクターを混在させているのが女性です。男が変わったとしても高々知れています。順応性、適応能力の高さは男性には到底真似が出来ません(だから女性は物事に動じないで長生きするのですね)。その不思議さを憧れのまなざしで白鳥と黒鳥を対比させて表現しようとしているのでしょう。もう一つは男性の、女性が「昼は貞淑な妻、夜は娼婦のように」あってほしいという願望(身勝手な)の現われではないでしょうか。女性にとってはいい迷惑なのかもしれませんが世の男性はそういう妄想を持っているのです。女性は「現実」に生きていますが、男性(チャイコフスキーマリウス・プティパ)は「夢」に生きているロマンチストなのです。そういう夢が白鳥と黒鳥を対比して登場させたのではないでしょうか。余談となりますがバレエはボリショイ、キーロフといったロシアバレエがとても好きです。伝統的に一糸乱れぬコールドバレエ、衣装、音楽、舞台背景などとてもロマンチックで美しく、素敵です。指先の動きまでも素晴らしく、一つ一つの演技(歌舞伎の見えをきる場面に似ている)もきちんと決まっていて爽快感に溢れています。バレリーナシルヴィ・ギエムが一番なのでしょうが私はニーナ・アナニナシヴィリNINA ANANIASHVILI(ユーリヤ・マハーリナも良い)が踊りも優雅で表情も素敵だと思います。バレリーナ達はすべて脚も長く線もスタイルも美しいのですが、私は特に首筋がとてもチャーミングに感じられます。私はそういう人を「首筋美人」と呼んでいます。彼女たちの歩き方身のこなし方は、しなやかで、エレガントでうっとりさせられます。プリマ・ドンナを目指し日々厳しい練習とダイエットに励んでいる人々にエールを送ります。