奈良薬師寺への誘い

新緑の木立に囲まれ白壁の東塔,西塔を配した薬師寺が千数百年の時を経て静かに西ノ京の大池のほとりに春日山を背にして佇む景色はすばらしい。天女が飛翔し、凍れる音楽と称される東塔の水煙が白い雲のたなびく青空に溶け込んでいるのは美しい。裳階(もこし)というスカートを履いた三重塔がリズミカルなのも面白い。そしてなんといっても圧巻なのは日光、月光の両菩薩を従えた世界一の薬師如来坐像である。時代を反映しているのであろうか、胸が厚くふくよかで、男性的である。両菩薩は少しツイストをし、ネックレスも付け、若々しく、靜の中尊とのバランスをとっている。衣がシースルーであるかの様に作られているのはまさしく美の極致である。由緒正しき春が今年も間もなく訪れることでしょう。
紫の君と歩きし薬師寺路そを懐かしみ一人訪ねん。
写真は薬師寺のホームページより